学生のとき、「イギリスの風俗」と言う講義を受けました。内容は忘れてますが多分、イギリスの宗教行事だのファッションや芸術の変遷だの、そう言うことを学んだように思います。
この場合の風俗は「時代性、地域性を伴う人々の習わし」と言う意味であり、今も「風俗」をこの意味で用いるのは、「もちろん、あり」です。
ただ、今、日本で「風俗」を耳にする多くの人が真っ先に思い浮かべるのは、「キャバクラとか、ホストクラブとか、麻雀とか、ゲームセンターとか、パチンコとか、デリヘル等の娯楽産業」ではないかなと思います。
それはなぜ?
「建設を生業とするのは建設業、お酒を売るのは酒類販売業、お金を貸すのは貸金業、と言う風に、たいがいは小林製薬のネーミング(「トイレその後に」「ポット洗浄中」「のどぬ~る」「熱さまシート」etc)みたいに(まんまで)わかりやすいのに、なぜ、この(人々にある種の娯楽を提供する)営業の名前は「風俗営業」なのでしょうか?(例えば、「特定娯楽提供営業」でも良いのでは?)
それは、この産業を「風俗営業」と名付けたから。
では、なぜ、どんな流れで「風俗営業」と名付けたのか?
気になって仕方がない人がいたら、「風俗営業取締り (講談社選書メチエ 238) 」の一読をお勧めします。当時の国会審議でのいろいろな人の発言とか、やむにやまれぬ歴史的背景とか、血の通った記述が盛り沢山で「なぜ、この名前?」と言う素朴な疑問が氷解します。
本書は社会学者が書いたものですが、風俗営業に関する法の成立や規制の過程を追いながら明治時代からの日本社会の人々の意識や生活(それこそ、意義の方の「風俗」?)なんかも興味深く描いていて、論理的で説得力に富んだ良書だと思います。